2018年12月27日 (木)

ACT:92 『夕里』

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「ゆ、ゆびさん!」
 ほづみを追って亜郎も“現場”へ到着した。「え。あ。亜郎君あんた、またハナヂを…」
「はふぁふぁふぁ、いや、ぼう、止ばりま……」と言いかけた亜郎の言葉が止まると同時に、鼻に詰めたティッシュがポンと飛んだ。
 亜郎はメガネを忘れた近視の人がするように目を細めては何度もしばたたかせ、首をかしげながら近づきつつ、夕美を斜め下からバイザー越しの顔を覗き込み、呆けたように見続けてから弾かれたように跳ね戻った。
「ど…ど、ど、どちら様…!?」

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2018年12月26日 (水)

ACT:91『止まれ!!』

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《夕美ちゃん、調子に乗るな、しゃべりすぎだ!》
 夕美から送られてくる犯人との会話に耳を澄ませながら、ほづみは亜郎を伴って校内の廊下を部室へと急ぎながらも、気が気でなかった。
 階段を上がりかけた時、前を行くほづみが突然立ち止まって亜郎を制して靴を脱ぐよう促した。階段はゴム底のスニーカーでも意外なほど足音が響くからだ。二人とも靴下になって二階へと駆け上がる。が、ほづみが階段なかばでまたも足を止めたので、亜郎はほづみの背中にぶつかりそうになった。

 振り返ったほづみが(シッ)と制して前を向くと、軽く上げた左手をゆっくり押すように二度、前へ振った。〈ゆっくり前進せよ〉の意味である。
 そのまま階段室の壁に張り付くようにして身を隠し、顔の半分をそろりと廊下側へ押し出すようにして片方の目で廊下の向こうを伺った途端、ふたりは同時に眼をカッと見開いた。

 5メートルほど向こうに、仁王立ちの“スクランブル・ユーミン”の後ろ姿があった。

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2016年4月17日 (日)

ACT:90『スクランブル・ユーミン、だよ。』

(と、東大寺さん!!)
(…名前で呼ぶな!お前、さっきから連呼しすぎやろ!オレらの身元が割れるやないかっ)
 “謎のコスプレ女”はこれまた謎の誰かと、ケータイか何かで自分たちの脚をヘシ折れとの物騒な相談中である。しかも東大寺はコスプレ女が放った閃光に視力を奪われて思うように動けず、相棒の鴨川もそれを見棄てて逃げられるほどの冷徹さもなく、また同時にたとえ常態だったとしてもお世辞にも戦闘向きでない二人は、結局のところ、その場に突っ立っている以外になすすべがなかった。

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2016年2月15日 (月)

ACT:89/真っ向対決!

 ───変身してみて、気がついた。

 このあと、何をどうしたらいいのか、全く考えていなかったのである。
 つまりは目の前の“賊”を捕まえればいいのだ。でも、どうやって?

 夕美はユーミンに変身した。弾丸を跳ね返し、身ひとつで空を駆ける、マンガやアニメの設定のままの“超人”に。それどころか“原作”にない瞬間移動などの能力まで持っているのだが、どれもまだコントロールができず、使い方も分かってない。

「だ、誰だお前!? なんだそのカッコ…あっ、東大寺さん!」

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2016年2月 8日 (月)

ACT:88/ふたたび、変身

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 夕美は夕美で気が気ではなかった。まさか3mほど前にいる男が自分を“オバケ”と思い込んで恐怖のどん底へ落ちていようとは思いもよらない。
 大きな暗幕をまとって全身を隠してはいても、全裸の身体に布を単純に巻き付けているだけである。
 

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2013年4月 8日 (月)

ACT:87/今度はあたしが黒ぅてアヤシイ存在て。

 こんな目に遭いながら、とりあえず…といったふうにテレポートなんて非常識な手段でここまで跳んではきたものの、今になって夕美は考えた。
 連中は───目の前の部室で泥棒を働こうとしてる怪しい連中の方でなく───ろくでなしの父親と、その助手のほづみと、この原因を作った亜郎───の三人は、はたして夕美をここへ来させた後の作戦はいったい、どんなものを考えていたのだろうか、と。

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 身につけていたものはすべて消えた。連絡を取れるように、と持たされたはずのトランシーバーも当然のように消えてしまった。
 値段などは知らないが、もともとハイテク装備を誇るメディア部部長である亜郎の持ち物で、例によって夕美の父親の耕助がちゃっかり接収(よこどり)したものだった。
 裕福らしき亜郎にしてみればさして惜しい物ではなかったかもしれないが、預かったヒトのものをダメにして悪い事をしたと思う反面、正直、須藤家からの出費でなかった事にホッとしている夕美だった。…いや───。
 

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