2021年1月22日 (金)

ACT:106/『夏の気配・3』

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Act106

(うわぁああああ…!!待って待って待って待って待って。どどどどどどどないしたら、どないしたら麻樹と鈴の突然の家庭訪問を諦めさせることができる!?!?)夕美はとめどなく脂汗を流しながら必死に考える。《家の修繕工事の邪魔になるから》…では、夕暮れも近いこの時間からでは説得力がない。《とにかく恥ずかしいから》いやいや、こんなライトなウソで感情的に抗議したところでふたりには通用すまい。なんとか隙を見て一人で逃げ帰った所で、家の場所はバレている、というかこの街で《山の上の須藤さん家》と言えば知らない人の方が少ないのだ。だからといって《迷惑だ、お節介はやめてくれ》ではふたりの気持ちを踏みにじる。だからといって、亜郎が居候している理由をどう説明すればよいのか。クチから出任せのウソで固める事など夕美には絶対に不可能だ。          
 頭上に黒く垂れ込めて行く雨雲にシンクロするように、夕美の目の前がまっ暗になってきたその時である。    

「ああっ、夕美さん!グスッ。こ、ここに居られたのですか。グスグスッ」三宅亜郎が現れた。
 脳天に雷が落ちてもここまでショックを受けなかったかも知れない。脱出艇の隅っこにグロテスクなエイリアンを見つけたリプリー飛行士の絶望はこんなだったろうか。      

     

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2021年1月20日 (水)

ACT:105/『夏の気配・2』

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 ピロリン♪また鈴のタブレットに着信のサインが鳴る。     
「うえええええ。鈴、今度は何やのん?」食後の仕上げのお茶をクチに運ぼうとした夕美の手も止まる。
「あ。《雨雲接近中》だって。あー。あれかな」なるほど鈴が指さす空には、吹いてくる湿った風を追って来たかのように黒い雲が低く大きく膨れながら視界に覆い被さって来ている。
「え。ほんま?雨降るん?遠回りして買いもん行かんならんのに!?───あっ。」弁当箱を仕舞い込む夕美の手がハタと止まる。
「どしたの」
「洗濯もん…!お父ちゃんもほづみ君も洗濯もんの取り込みなんかやってくれんやろうなあ…」
Act105

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2021年1月19日 (火)

ACT:104/『夏の気配・1』


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Act104
「そーろそろ屋上でのランチは暑くなってきたわねぇ」  
 食べ終えたサンドイッチのセロファンをクリームパンと入れ替わりに紙袋へつっこみながら麻樹(まき)が言う。
「そやねぇ。風があらへん時はもぉお陽さんがジリジリ来るわな。ぼちぼち日焼け止め要るかも的な」こちらはもちろん手製の弁当を食べている夕美。厚焼き玉子は今日の自信作でお楽しみだ。
「紫外線は真夏より今ごろの方が強いもんね」といち早く食べ終えてe-Padをいじっている鈴(すず)。「えっ。それもっと早く言ってよ!!」思わず麻樹は半袖から出ている両の腕を手で覆った。   
「ごめん。知ってると思ってた。───でも、その風もさっきから雨っ気の匂いがするよ」
 鈴がそう言うなり、三人娘のスカートをあおりながらさあっと風が吹く。その風も確かにどこか湿り気があって、お世辞にもサワヤカとは言いにくい。
「鈴は機械とかパソコンにもめっちゃ詳しいけど、ワンコか忍者みたいに自然派な所もあるんやねぇ。まあ、たしかにぼちぼち梅雨かぁ」
「うん。中間テストも近いよね♪」
 あやうく夕美は口に運んだ厚焼き玉子をノドに詰めかけ、思わず麻樹はクリームパンを握って中味を飛びださせてしまった。
 ピロリン♪と鈴のタブレットに着信のサインが鳴る。「あららっ」
「こ、今度はぬぁにっっっ!?」手に付いたクリームをなめながら麻樹が牽制する。

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2020年10月17日 (土)

ACT:103/『どうせあたしは噂の女』

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「ここまで言っても解らないなら、あえて説明するが…。まず、念じるだけで自在に物を動かせる、ものを透視する、考えを読める…など、いわゆる超能力を持っていたとする…さあ、おまえならどうする?」
「…どうする…って。沼に沈んだ戦闘機を持ち上げるとか、とり落とした武器を吸い寄せる程度のことしか思いつかんね。」
Act103
 それを聞くなり反射的に目を見開いたチャールズ・ハルステッド補佐官のこの時の顔こそは、いわゆる“ハトが豆鉄砲を喰らった”という表情だった。
「……なんだその面白い反応は」
「……い…いや、まさかおまえがスターウォーズを引き合いに出すとは思いもよらず。そういえば大統領の前でもC3POとか言ってたんでタマゲタんだが」

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ACT:102/『ガイア・ウェーブを追え!』

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Act102

 アントン・サムが発信したアリゾナ砂漠からの報告が数人の科学担当官を経て報告書にまとめられ、米中央情報局長官の手元に届いてホワイトハウスに至るまで1時間とかからなかった。   

「ハルステッドです、失礼します大統領。ガイアウェーブ観測所から四度目の感応が得られたとの報告がありました」

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2020年10月13日 (火)

ACT:101/『アントン・サムの小屋』

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 さらに時間をさかのぼる。場所も地球の裏側へと跳ぶ。

 雲ひとつ無く、まるで画家が手を抜いてカラーシート一枚で誤魔化したかのような、どこまでもベタ一面の真っ青な空。日本ではまだ初夏だというのに、ここでは一年の半分以上、真夏と変わらない強さで太陽がギラつく。
 経年変化でワクが朽ちて歪んだ小さな窓からは、右と左それぞれにこの世の果てまで続いていそうな舗装道路が一本見える以外、視界の限りに人工物は見あたらない。もっとも、雨も一年に数えるほどしか降らないここでは、窓なんて砂嵐が吹き込んでくるのと、食料を狙った野生動物の侵入を防ぐくらいしか役目はない。
 その道路にしても、アリゾナ砂漠からのべつ幕無しに吹き寄せてくる砂が縞模様を作っては消している。小屋の周りに数本生えている樹木以外は、生きてるのか枯れてるのかもハッキリしない灌木と、名も知らぬ草がまばらに生えているだけだ。
 そしてその景色は空の色と同じように、来る日も来る日も変わることがない。

 彼方には赤茶けた岩山の連なりが望めるが、土地が広すぎて距離感が掴めない。しかも大きさを比較できる基準がないため、それぞれの山は果たして遠いのか近いのか、どれくらい高いのかもわからない。アリゾナという名の由来も諸説あって定かではないが、少なくともこの砂漠に関しては神に祝福された物という意味でないことだけは間違いないだろう。
 音楽でも掛けてなければ、乾いた風以外の音は聴こえない───はずの小屋で、突然轟いたパソコンの大音量アラームにたまげたアントン・サム特技兵は頬張ったばかりのハンバーガーを誤嚥した。「……う!…むふっ!ぐぅっ、ごほっ!ごほごほっ!」

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2020年10月 4日 (日)

ACT:100/『車内戦略会議』

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「あっ?あれっっっっっ?……むぎゅううう」
 クルマが右へ左へと曲がる度に、後部座席で失神したままの“子泣き爺”耕介がずっしりと寄っかかってきては揉みくちゃになってる筈の亜郎が突然、素っ頓狂な声を上げた。
「亜郎君どうした? 何か忘れ物かい!?」
「い、いや、パスワードが。パスワードが判ったかも」

Act100

「えっ。凄いやん亜郎くん!どうやったん!?」夕美が思わずパチパチと拍手する。
「え?い、いや、まあ、その。たまたま上手く行ったようで」夕美の仕草の愛らしさに亜郎はまたも恋心を貫かれるのであったが、実はハッキングに成功したわけではなかった。

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2020年10月 2日 (金)

ACT:99/『ほづみ、うわの空。』

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Act99_2

 少し時間を───“学校侵入者撃退騒ぎ”解決の直後───まで、遡る。

「ほづみ君。聞いてる?」助手席の夕美が何度も話しかけていた事には気づいていなかった。
「───え。あ。ごめん、考え事してた」

 夜が明け、空が白んでくるのと競うように夕美、亜郎、耕介を載せて須藤宅へとワンボックスカーを走らせるほづみだったが、夕美の変身後の姿を観て以来、ずっとひとつの事に囚われ続けていた。
 夕里(ゆり)───夕美の母親の事である。遥かな───遥かな昔の一時期、夕里はほづみの姉のような存在だったが、その事はあまりにもヤヤコシイので順を追って綴ってゆくしかない。しかし、今はその時ではない。

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2020年8月30日 (日)

ACT:98/『SPEQTADD(スペックタッド)情報室にて』その3

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「ところで、麦茶をもう一本貰えるかい?私も興奮してるんだろう。なんかやたらにノドが渇いてね。」
「どうぞ何本でも飲んでください…ああ。…って言うほど冷やしてないか。まあ、あるだけご随意に」
「ありがとう。ちょっと愚痴を聞いて貰っていいかな?」
「愚痴?」突然いま何を言い出すんだこの人は。と三宅三佐は思った。まあ、出逢った最初の時からこんな調子で突拍子もない人だった。今更驚くにはあたらない。「───ええ。伺いましょう」
「…ありがとう。まあAパートとBパートの間のインターミッション(休憩時間)だとでも思ってくれ。」そう言うと天野二佐は“100円自販機の麦茶”をグビリとあおり、ふう、と息をついておもむろに語り出した。

「…私は。APの開発に生涯を懸けてきた。APを実在化するためだけに自衛軍へ入り込んだ。そしてそれを邪魔されたくない為に時に虚言を弄し時に善人を欺いて自由度が高く干渉されにくい今のポストも手に入れた。先任の三宅さんを押しのけて不愉快な思いをさせてまで、だ。」
 ───いや、そんなことないですよ…との三宅に愛想で否定する間も与えず、さらに天野は続ける。

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ACT:97/『SPEQTADD(スペックタッド)情報室にて』その2

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Scienagicact97

 ワンフロアのほんの一画をパーテーションで仕切られただけの六畳ほどの“陸上自衛軍特殊任務特務開発課(SPEQTADD)情報室”の、これまた片隅で中年と壮年の男ふたりが13インチしかないノートPCのモニタに顔を寄せ合うようにして見入っている様子は冷静に観察するまでもなくむさ苦しい光景である。が、それは置いておいて。

「───これは……!」と、思わず口に出してしまってから(オレ今、テレビドラマの定番芝居みたいな反応をしてしまったな…)と妙な恥ずかしさを憶えたのは着座してPCを操作している“SPEQTADD情報室長”の三宅三佐である。ふと、自分の横あいから同じモニターを覗き込んでいるSPEQTADD開発室室長の天野二佐の様子を伺うと、目を合わせてきた彼は“したり”と片眉を上げてニヤリと笑った。「さあさあ♪お代は観てのお帰りだ♪」

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